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第3回定例会報告 2009年4月

テーマ・・・瘀血(血流の停滞)
     『血をイキイキさせるための血液総合対策には「活血薬」を』
報告者・・・雙玉堂滝澤薬局 滝澤澄子

 栃木中医薬研究会の2009年4月の定例会では、中医学講師の陳志清先生に、「瘀血」に関連する疾患に対して活用することが多い「活血薬」を中心に、その効果をひきだすための総合的な活用方法や、活血作用のある処方の使い分けなどを講義していただきました。活血薬の効果のもつ意味、応用範囲の広さ、おのおのの処方構成のすばらしさなどを再認識した勉強会でした。

活血薬の活用経験

 前回同様、陳先生の講義に先立ち、各種活血薬を扱ってきた中での、各会員店の印象に残っている症例をはじめ、どんな疾病で効果が良かったか、それぞれの活血薬はどのような特徴をもつかなど、意見を交換しました。活血薬は、対象となる人が多いため、さまざまな意見が飛び交いました。

 「瘀血」は、誰にも容易に発生することをふまえると、瘀血の予防薬として、活血薬は幅広い層の人に利用していただけるものという意見が多数でました。特に、糖尿病の合併症予防や、血圧に不安を抱える人などには最適です。また、瘀血は病気や老化の引き金になることを考えると、「抗老防衰」(アンチエイジング)にも役立つものといえそうです。

 また、さらに、病気になりつつあり、より積極的に体質を改善し治療したい場合にも、活血薬は、「気」や「陰」などの虚を補う処方とともに組み合わせ、より体調を整えるのに役立つことがわかりました。腎機能が低下した方のクレアチニン値が安定したり、西洋薬で下がりにくい最低血圧が下がりやすくなるなど、体全体をみて処方を考える「弁証論治」を活用する中医学ならではのメリットではないでしょうか。

中医学の「瘀血」とは?

 中医学では、前回の講義でもでたように、整体観念をふまえて、気・血・水の概念の中で、体が部分的のみならず全体的にどういう状態か考える必要があります。中医学でいう「瘀血」とは、血流が悪い、血液の質が悪い(汚れている)などをさします。また、脳梗塞やけがなどから血栓ができている、動脈硬化など血管が弱くなっている、子宮内膜症など本来の場所から外れてしまった血液、筋腫などのしこりなども含みます。さらに、慢性疾患には必ず瘀血がある「久病入絡」という発想や、病理産物として発生した瘀血がほかの病気をひきおこす「瘀血は万病のもと」という考えは、中医学ならではのものといえるでしょう。

現代医学の「瘀血」の解釈は?

 現代医学的に説明すると、全身あるいは局部の循環障害から、血液が濃縮され、粘稠となり、滞り、固まって、新陳代謝異常の病理状態をひきおこしている状態です。血小板凝集性と粘着性も増強しています。この状態は、動脈硬化、高脂血症、狭心症、高血圧、糖尿病など生活習慣病によくおきる病理変化です。

「瘀血のタイプ」

 先生は、血の流れを道路や自動車などの物流にたとえて説明してくださいました。スムーズに物流が運行されるためには、自動車の性能や道路の整備、きちんとした交通ルールなどが必要で、管理方法は状況に応じてさまざまです。人の血液の流れも、これと同様で、流れをスムーズにするには、その人そのときに適した総合的な対策が必要といえます。

 タイプとして、ストレスが多く気と血が滞った「気滞血瘀」、よい血液が不足したためにおきる「血虚血瘀」、血を流すパワーの不足から滞った「気虚血瘀」、冷えから血流が悪くなった「寒凝血瘀」、代謝されない汚れた水分と一緒になった「痰瘀互血」、伝染病や食生活などから熱をもった「瘀熱」などが、店頭で多いということを確認しました。そして、それぞれに適した対策の処方を整理・復習しました。

活血薬についてのポイント

 活血薬として、繁用する処方については、私たちも度々勉強を重ねてきましたが、再度、ポイントを説明していただきました。活血薬の多くは、血のめぐりをよくする働きを中心に、気のめぐりもよくする作用もあり、体内で効率よく働いてくれます。現代の研究では、血管保護や血栓を溶かす作用などが確認されているものもあります。

 そして、活血薬の多くは、作用のバランスがとれているのももちろん、温めたり冷ましたりといった性質のバランスもよく、心系、肝系に作用するのが特徴です。中医学では、「心」は血脈を司る、「肝」は血を蔵しまた疎泄を司るといい、血液は心肝に集まると考えます。したがって、心肝系に作用するということは、心や肝の病気や不調を整えるのに最適の処方といえるのです。こうした中医学の観点からみても、活血薬の処方が優れているのはもちろん、現代医学の視点からのデータも蓄積されており、まさに活血薬は、中医学・現代医学の結合の賜物といえるでしょう。

活血薬の組み合わせや使い分け

 最後にさまざまな種類の活血薬の、使い分けを復習しました。それぞれの処方の特徴やどういった疾患により効果的かということを整理していただきました。使い分けることによって、より、瘀血に対する対応がきめ細かく適切にできるかと思います。

 今回の講座を通して、改めて現代社会における活血の重要性、処方のすばらしさ、品質へのこだわり、応用範囲の広さなどを再認識しました。中医学のすばらしい発想である未病先防にも、活血薬は不可欠なものと思います。多くの方の健康に役立てていただけるよう、研究会としても勉強と啓蒙を続けていきたいと思います。