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No.93 加齢による病気との闘いに寄り添う医学

漢方茶
 現代医学は,病気の原因として細菌・ウイルスなどの病原体,ホルモンや神経伝達物質の細胞の受容体への結合に始まる一連の化学過程,免疫反応に関わる複数の細胞や物質,遺伝子の塩基配列の欠損や変異など,すべて,ミクロな仕組みを究明して,病気の診断と薬効の確証(エビデンス)をつかみ,治療を進歩させてきました.老化に対しても,あくまで,ミクロな本質を究めて闘おうとしています.

 漢方は,大自然の法則性に学び,人体の全体を広く見渡し,現象に即したマクロな要素を分析し,各要素の不足や停滞の改善に役立つ薬性が認められる天然の生薬を組合せて病気を治してきました.人体は,機能を支えるエネルギーになる「気」,栄養供給を担う「血」,組織を浸して落ち着かせる「水」の3要素の連携によって健やかに運営されている.さらに,生命を維持する基礎を支える「精」が蓄えられ,3要素に転化して減少を和らげる緩衝作用がある.加齢で「精」の蓄えが少なくなると,「気」・「血」・「水」の回復もしにくくなると考えます.

 自覚できる症状などの現象から病気の本質をマクロに捉えるので,患者が実感してきた体調変化から病気に至る経緯と,その間の記憶と心情で胸中に綴られてきた病気の物語を,本人の納得のいくような説明で裏打ちできる医学が漢方です.患者の気持ちに寄り添って病気を治療するための基礎改善に役立ちます.