No.103 頭痛を緩解させるための漢方の理念
頭痛の漢方薬として知られる「川芎茶調散」は900年前(12世紀)の宋代の方剤書『和剤局方』を原典とする処方です.頭痛の症状を伴う疾患を中心に広範に活用されてきました.
「川芎茶調散」の処方の主要部は,いずれもセリ科の植物由来の「川芎」・「白芷」・「羗活」の3生薬を代表とする3群から構成されます.3生薬は,強烈な芳香と辛味の刺激で発散させる薬性があり,頭痛を起こす広義の「風邪」を吹き飛ばして除去すると考えられています.
「川芎」は「肝」と「胆」の臓腑に作用して「血」と「気」の流れの停滞を解消し,「風邪」を除去します.同様の薬性と作用の「香附子」を加えて第1群とします.「肝」と「胆」に連結する経絡が通る頭頂部と側頭部の頭痛を解消します.「白芷」は主に「胃」の腑に作用して「風邪」を除去します.同様の薬性と作用の「薄荷」を加えて第2群とします.「胃」に連結する経絡が通る前頭部~前額・眉稜の頭痛を解消します.「羗活」は「膀胱」の腑に作用して「風邪」を除去します.同様の作用の「防風」と「荊芥」を加えて第3群とします.「膀胱」に連結する経絡が通る後頭部~項背の頭痛を解消します.
「川芎茶調散」は,さらに配合された「茶葉」の苦・甘味の薬性で過熱・脱水を防ぎながら,臓腑ネットワークを利用して,3群の生薬で頭痛のポイントを突いて,偏りなく総体的に緩解させる漢方の理念を具現化した処方です.
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