No.109 長引く慢性炎症を終わらせる体質改善
体のどこかが腫れて,熱を持って赤くなり,痛みや痒みを起こす症状は炎症と表されます.炎症は本来,人体に侵入した病原体や有害物を攻撃して分解処理するため免疫系が起こす仕組みの一部です.外から感染や害毒を被らなくても,組織の物理的な損傷が起きても,老廃物が溜まっても,それらの残骸・蓄積物を分解処理するため炎症を起こします.また,免疫系が過敏反応する状態になれば,無害な物質や自己組織を攻撃して炎症を起こします.
病原体の強さ・身体虚弱・加齢・悪い生活習慣・免疫系の過敏反応のため,炎症が短期で治まらず,慢性化して長引くことがあります.疾患により,滲出・水腫・線維化・癒着・器質化・化膿・膿瘍・出血・肉芽腫など様々な症状を伴い,組織は壊死と再生を繰り返すうち,細胞の形が変化する化生とか,突然変異から未分化細胞が増殖する悪性腫瘍などの疾患にも発展します.現代医学では,慢性炎症疾患の重症化や発展を抑えるため,多くは炎症を止める抗炎症薬に頼って治療します.
漢方では,炎症症状の本質は「熱」と表され,滲出が多い「湿熱」,発赤が強く出血しやすい「血熱」,症状が激しく化膿を起こす「熱毒」と区別して,適した薬性の生薬を選ぶことで,炎症を行き過ぎなく抑制できます.「熱」は人体に有害な「邪気」の一種と考えて,これと闘う人体の「正気」を強めるために,体内の物質・機能の要素を充実させる生薬を用いて,炎症の慢性化体質の改善を図る知恵があります.
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