No.116 自律神経の麻痺も回復する漢方?
「大活絡丹」という清代の漢方処方は,宋代から知られる「小活絡丹」を基礎に,「蘄蛇」や「全蝎」などが配合生薬に加えられた改良処方です.邪悪なものの象徴として蛇蝎(ダカツ)と古来忌み嫌われてきたヘビやサソリに,比較的穏やかな薬性ながら優れた薬効が見出され,人体内の「気」や「血」が流れる「経絡」を閉塞させる「風」の邪気を除去し,重症の痛み・痺れや卒中後の運動麻痺の改善手段になりました.
現代医学的な神経全般の障害の改善に役立つならば,呼吸器感染症後の嗅覚や味覚など知覚神経の障害,帯状疱疹その他の感染症後の神経痛,頸椎症による手の痺れ,運動神経障害では顔面神経麻痺,眼瞼痙攣,四肢の強張りも改善可能な適応対象になるでしょう.
体性神経の障害は,感覚の消失(知覚麻痺)あるいは異常(痛み・痺れ)を起こすとか,運動が不能(運動麻痺)あるいは異常(痙攣・強張り)になる症状が判別しやすいですが,自律神経の(失調ではない)障害による,わかりにくい内臓の感覚や運動の麻痺や異常もあります.
脳脊髄液減少症(髄膜損傷による漏出)の治療後も体力が回復せず,体調不良を起こす人に,「大活絡丹」の主要な配合生薬を適用したところ,知らずに消失していた空腹感・渇き感・疲労感など,内臓感覚として知られる感覚が復活し,体力が回復しやすくなりました.
←「春の漢方講座 受講生募集中(リビング栃木新聞)」前の記事へ 次の記事へ「5月19日 講演会を開催!参加者募集中!!」→