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No.6 「淡味」の生薬は脇役として活用

 漢方における「淡味」は,単にうすい味という意味ではなく,辛苦甘酸鹹の五味以外の重要な薬性の尺度となる第六の味です.薬性理論によれば,たとえば「茯苓」(マツホド)や「ヨク苡仁」(ハトムギ)などが淡味の生薬で,浸透性・排水性の薬性があります.鹹味や甘味が体内に水分を貯留させるのとは反対に,淡味の生薬には,体内の過剰な水分を尿として排出するのを促進する作用があります.

 体内に必要な水分まで尿として出してしまう現代医学的な利尿剤とは異なり,淡味の生薬は,組織間や消化管内にだぶついた水分を血中に引き込む結果として尿量を増やすので,浮腫・水腫・重だるさ・腹部膨満・尿量減少・下痢・水様便・帯下過多などの解消に活用でき,弊害がないと考えられています.

 それでも漢方では,特に代謝バランスがくずれて水分が消耗しやすい体質や,脱水を起こしやすい状況では,水分のだぶつき症状があっても,淡味の生薬のみを用いることは避け,原因となる泌尿器系・消化器系などの弱まりの改善を同時に図ります.「牛車腎気丸」という漢方処方は,淡味の「茯苓」・「沢瀉」・「車前子」で,組織間にだぶついた水分を排出し,浮腫・尿量減少などに対処しつつ,甘味の「地黄」・「山薬」などで泌尿器系の組織を養い,機能を高めていきます.「参苓白朮散」は淡味の「茯苓」・「ヨク苡仁」で,腸管内などにだぶついた水分を排出し,下痢・水様便などに対処しつつ,甘味の「人参」・「山薬」などで消化器系の組織を養い,機能を高めていきます.