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No.15 生命力を生み出す根源を養う薬性

 漢方において「腎」は生命力を生み出す臓器です.現代医学的な意味での腎臓だけでなく,体液のバランスを保つ泌尿器系,遺伝子を子孫へ伝える生殖器系,自己の組織を守る免疫系まで包括し,活気あふれる生命の営みを絶やさず維持する器官系を「腎」と呼んでいます.

 漢方理論によれば,「腎」には生命力を生み出す根源とも言うべき「精」が蓄えられています.この「精」の蓄えが先天的に少なかったり,過労や不摂生によって消耗したり,老齢のために尽きてくると,「腎」に属する各系統の機能の衰えが現れます.小児では,発育不良・運動能力や知能発達の遅れ・夜尿症など,成人では,早期の老化現象・足腰の弱り・夜間頻尿・耳鳴り・めまい・健忘・知能減退・動作緩慢など,女性では,無排卵・無月経・早産・流産・不妊・早期の閉経など,男性では,性欲減退・陰萎・早漏・遺精などです.

 「腎」における「精」の不足を補う薬効をもつ生薬には2種類あります.鹹味のある「鹿茸」・「海狗腎」・「紫河車」・「海参」・「淡菜」・「蛤カイ」・「亀板」・「肉ジュ蓉」はミネラル分を豊富に含み,組織によくしみ込んで蓄えを潤沢にしていく濃厚な滋養性が特徴です.甘味の「熟地黄」・「何首烏」・「阿膠」・「枸杞子」・「胡麻」・「黄精」・「山薬」・「菟絲子」・「沙苑子」・「鎖陽」・「杜仲」・「巴戟天」・「冬虫夏草」は,長期の服用で効く穏和な補益性が特徴です.「至宝三鞭丸」・「海馬補腎丸」・「参茸丸」・「参茸補血丸」は両方の生薬をバランスよく配合した処方です.