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No.39 皮膚・粘膜に活力を与える薬性

 人体の表面をおおう皮膚・粘膜は,単なる均一な細胞層ではなく,分泌腺などの付属器や免疫系の自由細胞を内包し,血管と神経を内に張りめぐらし,人体の保護・免疫・適応の機能を担っている器官です.元代(14世紀)の書物に記載された「玉屏風散」は,皮膚・粘膜の器官の活力(「衛気」)を補い,本来の機能を回復する漢方処方です.3生薬による2薬効の組合せでこの目的を実現させています.

  「益気実衛」の薬効のために用いられる生薬 は「黄耆」です.薬性としては,甘味が有する補益性に温熱性が加わって昇浮性を生み出し,体内から「気」(エネルギー)を盛んに湧き上がらせ,全身に送り届ける作用につながります.補佐的に配合される「防風」は,辛味の昇浮・発散性と甘味の緩和性で,軽度な体表血管の拡張と発汗促進を生じ,感染・アレルギー・寒冷などにともなう皮膚・粘膜の過剰反応を解除すると同時に,「黄耆」の作用を特に皮膚・粘膜へと集中させて「衛気」を充実させます.

  「益気健脾」という薬効の生薬は「白朮」です.甘味の補益性,苦味の乾燥・排水性,温熱性,「脾」に重点の薬性から,消化器系の機能条件を整えつつ,エネルギー源になる栄養素の供給を活発化して,下支えの役割を果たします.

 以上のように,「玉屏風散」で皮膚・粘膜の器官の活力が旺盛に保たれ,外から侵入する病原体・異物・温度変化に,機敏で手際よい対処・適応ができ,健康の維持に役立ちます.