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No.46 休養態勢を整えて生命力を養う漢方処方

 「杞菊地黄丸」は,宋代の「六味地黄丸」を基本骨格として考案された有名な加味処方です.加味された生薬「枸杞子」と「菊花」の組合せは,この処方が清代の総合医学書への収載に至るまでの漢方理論の進歩を反映し,「肝腎陰虚」に適応される代表処方の一つになりました.

 「補腎滋陰」という薬効を発揮する生薬群は,「熟地黄」・「山茱萸」・「山薬」・「沢瀉」・「牡丹皮」・「茯苓」で,「六味地黄丸」を構成する6種です.生命力を維持する機能系「腎」への作用が共通で,態勢転換の自律調節系「肝」と栄養吸収の消化器系「脾」にも作用する生薬を配して,甘・酸・渋味と温熱性による滋養・補益・収斂の薬性と,淡・苦・辛味と寒涼性による排水・抑制・発散の薬性でバランスをとり,心身の休養で蓄えられる「腎」の組織の栄養と潤いの要素「陰」の不足を穏やかに改善していきます.

 「養血柔肝」と「補腎益精」の薬効を加えるのは「枸杞子」です.「肝」と「腎」に作用し,甘味と潤質による滋養・補益の薬性で,栄養素と水分を組織へ供給する休養態勢のゆったりした血液の流れ「血」を増やし,生命力の維持のための根源的な要素「精」の蓄えも守ります.

 「平肝熄風」の薬効を加えるのは「菊花」です.「肝」に作用し,甘・苦味と寒涼性による保護・抑制・鎮静の薬性があります.「陰」の不足を代償するための栄養代謝の過熱にともなう自律機能系の緊張・興奮から,痙攣・昇圧・振戦など,「内風」の症状が起こるのを抑えます.