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No.57 「気」と「血」から生命力を養う「補腎薬」

 「補腎薬」の処方構成は,漢代に考案された「八味地黄丸」を原点として,その後の理論的な認識の進展を反映し,現代の「中成薬」の改良処方に見られるような,主に以下の3種の生薬が配合された構成へと変化してきました.

①「鹿茸」などの動物生薬の配合が,生命を支える「腎」の原動力となる「精」の蓄えを回復する効果を格段に強め,
②栄養素の吸収・供給を推進する「気」を補う「人参」の配合が,「腎」の活発さ「陽」を高める補助として有力で,
③栄養素を全身に行き渡らす担い手である「血」を補う「当帰」などの配合が,「精血同源」の原理から,「精」の回復に不可欠です.

 この3種の配合は,明代の張景岳により「右帰丸」・「賛育丹」・「毓麟珠」などの名処方に応用され,それが模範となり,現代の「補腎薬」の改良処方である「参茸補血丸」にも継承されています.

 「補腎助陽」が「参茸補血丸」の主要薬効です.配合①の応用で,鹹・甘・辛味で温熱性の「鹿茸」・「杜仲」・「巴戟天」の濃厚な滋養・鼓舞の薬性が「腎」に作用して,「精」の蓄えを力強く回復させ,「陽」を生み出す働きを助けます.

 「益気養血」が「参茸補血丸」に特徴的な補助薬効です.配合②と③の応用で,甘味で温熱性の「人参」・「黄耆」の補益・鼓舞の薬性が,栄養素の吸収・供給を推進する「気」を補い,甘味・潤質の「当帰」・「竜眼肉」の滋養の薬性が,栄養素を運ぶ「血」を増し,「精」の蓄えと「陽」を維持するために必要な余力をつけます.