中国で誕生した伝統医学は古くから日本に伝えられ、日本人の体質や日本の状況に合わせて応用されてきました。その医学体系は今日「漢方」あるは「中医学」といった名称で呼ばれています。
「漢方」という言葉は江戸末から明治初期のころに日本で生まれた言葉です。漢方の「漢は広く中国を意味する言葉で、とくに漢の時代を指すわけではありません。また漢方の「方は「方技・方術などの略で医術を意味するものと考えられます。つまり「漢方は現代語的に表現すれば「中国医術となります。
また「中医学」という言葉は中華人民共和国成立(1949年)の後、中国で自国の伝統医学に対して付けられた名称で、「中国伝統医学」の略です。
「漢方」というと、草根木皮を由来とする生薬を組み合わせた「漢方薬を主体とする医薬学(薬物療法)であり、鍼灸や按摩といった伝統医学とは区別されることが多いですが、「中医学」といった場合には鍼灸や按摩もその一部として扱います。
また「漢方」という名称が江戸末ごろに日本で誕生したことから、そのころまでに日本に定着した中国医学のみを「漢方」と称し、「中医学」の呼称誕生の後に伝来した学説は「漢方」の範疇に入れないとする考え方が存在します。江戸時代の「漢方の特徴は、中国の清の時代(1636~1912年)に起こった復古主義の影響を受け、漢代(B.C.202~A.C.220)の古典に返る考え方が主流となりました。しかし清代には新たに発展した学説もあり、「中医学」にはその影響が色濃く残ります。
ただし「漢方」と「中医学」はその源は同じであり、共通する生薬や方剤も多いことから明確に区別することは困難であり、同義のものとされることも少なくありません。そのためこのホームページにおきましても「漢方」「中医学」「中国医学」といった言葉はほぼ同義の言葉として使用しています。
私たち栃木中医薬研究会は発展的な中医学の考え方を積極的に取り入れ、現代社会が抱える生活習慣病、不妊症、高齢に伴う失調などへの応用も研究の対象としています。
ところで、日本独自の薬草文化として、「どくだみ」や「げんのしょうこ」、「せんぶり(とうやく)」といった単一の薬草のみで行う古来の治療法があります。これらは「民間薬」あるいは「和薬」と呼ばれ、中国由来の「漢方」「中医学」とは別のものになります。