漢方の特徴として、まず自然の植物、動物、鉱物などを由来とした生薬を用いることが挙げられます。一方西洋医学では化学薬品が主流です。生薬と比べて化学薬品は一般的に人体への刺激が大きく、反応性が速い反面、副作用のリスクも大きくなる傾向があります。
また漢方における人の見方や病気のとらえ方、薬の選び方なども特徴的です。漢方の基本は、今から2000年ほど前には出来上がっていたと考えられます。当時は、自然観察から生まれた「陰陽説」「五行説」といった自然哲学を根拠に万物の存在や機能が理解され、人体も例外ではありませんでした。
「陰陽説」は万物を「陽」の要素と「陰」の要素に分類するもので、例えば「太陽と月」「火と水
「熱と寒」「表と裏」「動と静
「男と女」といった分け方です。ただこれらは単に区別するのではなく、対立・調和・扶助といった関係性にあることを重視します。
「五行説」は万物を「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素に分類するもので、これを人間に当てはめた代表的なものに「五臓
があります。しばしばお酒や美味しいもの、体に良いものなどを口にしたときに「五臓六腑に染み渡る」と表現される、その「五臓」です。「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の5つがいわゆる「五臓」で、生命活動の中心です。やはりこの場合も、単なる分類ではなく、互いに助け合ったり抑制しあったりする関係性を重視します。
例えば「心」の不調であっても他の「肝」「脾」「肺」「腎」との関係性を常に考えます。具体的に例示すると、動悸がするといったときに、ストレスはどうか、眠れているか、食欲はどうか、冷えやほてりはないか、頭痛やめまい、耳鳴りはないか、大小便の調子はどうか、症状の出る時間や季節はいつかなど、あらゆる要素から動悸の原因や治療法を検討します。つまり漢方では、症状の発生している箇所だけでなく、心身全体さらには季節や環境まで含めた全体から病気にアプローチすることを特徴としており、この点は西洋医学とは異なる大きな要素といわれています。