No.110 血液凝固を抑えず血栓を予防する方法
血流中にできる血液の固まりは血栓と呼ばれ,どこかの血管に詰まって血流を止めれば脳梗塞や心筋梗塞などの障害を起こします.そもそも血栓は,組織が傷害を受けて血管が切れて出血したときに,傷を塞ぐように血を固めて止血する仕組みによって形成されます.血液の凝固は,多数の物質が関わる多重の連鎖反応が成立したときに起こり,不要になれば溶解するようになっています.ところが,生活習慣病または加齢のため,血管が動脈硬化などで劣化するか,血流が遅くなると,外傷がなくても凝血が成立して血栓ができます.
現代医学では,血栓の形成を予防するため,血液凝固の仕組みを抑制する方法を講じます.しかし,血の固まりが詰まる危険を避けようと,日常的に凝血を抑える服薬を続けるのは良い予防法でしょうか?血栓を起こしやすい条件を改善する方法はないのでしょうか?
漢方では,血行の停滞を表す「瘀血」が長引くと,体内に何らかの固まり(血栓・線維化・腫瘤など) を表す「癥瘕」が形成されると考えられています.「瘀血」を解消する生薬として,「水蛭」のような,凝血を抑制して溶解を促進する「破血薬」もありますが,「丹参」のような,直接凝固を抑えずに「癥瘕」を防ぐ「活血薬」もあります.「丹参」が主薬の「冠心Ⅱ号方」を製剤化した「冠元顆粒」は,長期に服用して,止血の仕組みを弱めず血栓の予防に役立ちます.