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No.2 「苦味」の生薬は乾燥性に注意して活用

 漢方理論によれば、「苦味」の生薬には清浄化・乾燥性の薬性(薬としての性質)があります。この薬性は、体から不要で有害なものを排出するのに役だち、抗菌解毒・消炎解熱・余剰水分除去などの薬効として活用されます。

 このため、熱や滲出をともなう炎症などに 「苦味」の生薬が適応されることは多く、その際、熱代謝の亢進を抑えきれず、水分や栄養素の消耗が激しいと、「苦味」の乾燥性が悪影響して消耗をなお助長し、脱水・異化亢進・病状悪化などの副作用の原因にもなります。

 日本における慢性肝炎への「小柴胡湯」の応 用による副作用(間質性肺炎)の多発は、まさに、柴胡・黄ゴンなどの「苦味」の生薬の強い乾燥性の影響に対処せず病状悪化させた結果と考えられます。「小柴胡湯」は本来、感染性疾患の過程で弛張熱をともなうときに短期適応されるハードな薬性の処方です。本場中国の漢方では、同じく柴胡を主薬として活用するのでも、慢性疾患の長期にわたる治療に役だてる目的には、多くの場合、マイルドな薬性の「逍遥散」が基本処方として選ばれます。

 「逍遥散」の配合生薬のうち、当帰の「甘味」には補益性・保護性の薬性、芍薬の「酸味」には収斂性・安定化の薬性があります。ともに、栄養素と水分の蓄えを増やして消耗を防ぎ、柴胡の乾燥性の影響から保護して副作用を回避するだけでなく、心身の機能のリズムを安定させることで病状改善にも寄与しています。