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No.17 血液循環を改善する薬性

 ”血液をサラサラにする”という表現で,近年,血液の性状と循環を改善する生薬や食物の作用が紹介され,脳梗塞や心筋梗塞の予防に役立つと話題になっています.このような天然物の多くは,漢方では一般に「活血薬」と呼ばれます.「活血薬」には主に辛味・苦味の2種類があり,それぞれ薬性が異なります.

 辛味の「活血薬」は「川キュウ」・「紅花」・「延胡索」・「益母草」などです.薬性理論では,辛味には発散・疎通の効果をもたらす薬性があって,昇(下から上へ)と浮(内から外へ)の方向性があります.力強く押し上げ,爆発的に広く散らすような動きをもたらす薬性です.話題のタマネギ・ニンニクも,この部類に属する薬性をもちます.味覚からもわかる強い刺激が全身に速やかに波及し,末梢血管を拡張させ,各部の血流量を増やして循環を改善します.

 苦味の「活血薬」は「丹参」・「赤芍薬」・「桃仁」・「牛膝」・「大黄」などです.理論では,苦味は抑制・浄化の効果をもたらす薬性があって,降(上から下へ)と沈(外から内へ)の方向性があります.高ぶりをしずめ,戻らず滞るものを元におさめ,かすを落として澄ますような薬性です.興奮・緊張・痙攣・収縮を緩解し,末梢に欝滞している血液を本流へと戻し,各部の本来の血流を回復して循環を改善します.

 「冠心Ⅱ号方」とその顆粒製剤「冠元顆粒」は,苦味の「丹参」・「赤芍薬」に,辛味の「川キュウ」・「紅花」を配合し,相互に行き過ぎを防ぎながら,両方の薬性を有効活用している処方です.