No.28 血液の流入と還流をよくする薬性
人体における血液の役割は,動脈性血液であれば,組織に酸素・栄養素・水分など必要物を供給すること,静脈性血液であれば,二酸化炭素・代謝産物・老廃物など不要物を搬出することです.動脈性血液の流入がよくないと,組織への必要物の供給が不足します.これを漢方では「血虚」と呼びます.一方,静脈性血液の組織からの還流がよくないと,搬出が停滞して不要物がたまります.これを漢方では「オ血」と呼びます.ひと言で血流をよくするといっても,流入と還流の両要素を常に視野に入れて用薬するのが漢方流です.
「熟地黄」・「当帰」・「白芍薬」・「何首烏」・「阿膠」・「竜眼肉」などの生薬は,薬性として,甘味に特有の滋養・補益,酸味に特有の収斂・保護の効果があり,組織へ必要物を供給する役割を担わせるべき血液を養う(養血)作用につながります.人体に本来備わる休養の仕組みを回復させることによって間接的に,特に不足しがちな皮膚や内臓などへの動脈性血液の流入を主に増加させ,「血虚」を改善します.
「丹参」・「川キュウ」・「赤芍薬」・「紅花」・「桃仁」・「牡丹皮」・「牛膝」などの生薬は,薬性として,苦味に特有の抑制・浄化,辛味に特有の発散・疎通の効果があり,組織から不要物を搬出する血液の流れを活きかえらせる(活血)作用につながります.循環器系における無用な緊張・痙攣を抑制し,末梢血管を拡張し,静脈性血液の還流を正常化して,「オ血」を解消します.
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