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No.42 人体の自律機能を活発化する漢方処方

 「逍遥散」という漢方薬は,日本で生理不順や更年期障害に適用する「加味逍遥散」のもとになった,宋代から知られる「調和肝脾」の代表処方です.「肝」は現代的には自律機能調節系,「脾」は消化器系に相当し,心身の態勢転換リズムの失調に関連する広範な適用対象があります.3薬効の生薬群から構成されます.

 「疎肝解欝」という薬効を発揮させるために配合された生薬は「柴胡」・「薄荷」です.「肝」に作用するのが共通で,芳香・軽質の生薬に特有な昇浮・発散の薬性があります.これは,心身の態勢転換の命令を脳から全身の隅々の器官・組織にまで波及させる働きを活発化し,自律機能の連携の疎通を良くし,ストレスの発散,抑欝状態の解消にもつながります.

 「養血柔肝」という薬効を発揮させるために配合された生薬は「当帰」・「芍薬」です.「肝」に作用するのがやはり共通ですが,甘・酸味が有する補益・保護の薬性があります.末梢血流を増やして栄養供給を十分にすることで,各器官・組織が心身の態勢転換の命令に対して無理なく柔軟に応じられるようにします.

 「健脾益気」という薬効を発揮させるために配合された生薬は「白朮」・「茯苓」・「炙甘草」・「生姜」です.「脾」に作用するのが共通で,甘味による補益と,苦・淡・辛味による除湿の薬性が,機能増進と負担軽減につながります.自律調節を受ける器官であり,栄養供給源の役割を担っている消化器系を健やかにします.