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漢方での婦人科の治療方法

中国漢方の基本は気と血

 中国漢方では人体は五臓六腑を中心として、体の基礎物質である気(エネルギー)と血が経絡という通り道を流れ、生命活動が維持されていると考えられています。女性特有の病気でも他の病気でも、中国漢方の治療原則は同じで、まず気と血のどちらかに問題があるか、気と血が五臓六腑のどこで問題をおこしているか、病気の性質が冷えと熱のどちらにあるかで、治療方法を決めます。

赤ちゃん誕生も同じ

薬局へ行くパンダ親子 女性特有の月経・妊娠・出産・授乳のおおもとは血です。しかし、血だけでは充分に機能することはできません。気の助けがあってはじめて血は力を発揮できます。気と血のトラブルは二つしかありません。一つは気が不足した状態で、中国漢方では「虚」といい、気が不足すれば「気虚」、血が不足すれば「血虚」となります。もう一つは気、または血が滞った状態で、気が滞れば「気滞」、血が滞れば「血瘀(けつお)」となります。

あなたはどのタイプ?その特徴と治療法

  気虚(ききょ) 血虚(けっきょ) 血瘀(けつお) 気滞(気滞)
全身の症状 息切れ
話し声が小さい
話したがらない
精神疲労
顔が青白い、
あるいは艶がない
黄土色
爪や唇の色が
淡く白っぽい
めまい
明るいところを
見るとまぶしい
舌が紫暗色、
あるいは黒っぽい瘀斑、瘀点がある
針で刺すような
固定した痛み
しびれ、しこり
胸脇腹部の脹満
張れて痛む
痛む場所がが移動
する
イライラ
怒りっぽい
女性生理の特徴 月経血量は少ない
あるいは多い
色が淡い、あるいは
だらだらと出る
月経血量少ない
色淡い、あるい
は月経がない
不妊
月経血色黒
塊がある
月経痛
月経に遅れ。
あるいは月経がない
月経痛
月経前に乳房が
張れて痛む
あるいは生理不順
基礎体温 体温は全体的に
低い(低体温)
高温期の上昇が
遅い
低温期が長い
(15日以上)
高温期が短い
(13日以内)
一般的 いつ排卵したか分かりにくい
排卵チェックは陽性で、
遅くとも「40時間以内に排卵する」
と思われても、実際に排卵するまで、
4日間以上かかる
治療 補気
気を補う
補血
血を補
活血
血の流れを良くする
理気
気を巡らす

 

体の根本は腎の精

 私たちは女性の体をダムにたとえて説明します。中国漢方でいう「精」という物質(生命エネルギーのもと)がダム全体をコントロールしています。この精は父と母から受け継いだ先天的なもので、腎に蓄えられているため、腎精と言います。つまり腎精が十分にあれば、女性の生理、つまり月経・妊娠・出産・授乳は正常に機能します。もし腎精が不足すれば、ダムの基礎工事が完全でないため、不妊や閉経などの原因となります。この腎精不足には、腎の働きを強くする補精・補腎薬を使いますが、多くは鹿茸(鹿の幼角)やオオヤモリなど動物からとった薬が配合されたものを用います。

 ダムの門の開け閉めを担当しているのが肝で、28日前後月経がくるのは肝の働きです。受験やいろいろなストレスで月経が狂った経験があると思います。ストレスなどで肝の機能が乱れたためです。この場合には月経が早まったり遅れたりする生理不順が特徴です。

 月経の材料は血であり、この血は食べ物や栄養分から脾胃(胃と腸などの消化器系)の働きを通してできるもので、その機能が十分でなければ、血が不足して、月経が遅れます。ひどくなると若くても月経が止まり、不妊の原因となります。授乳しているときに月経がないのは、血が上にあがって母乳となり、下に下がって月経となる血液が不足するからだと考えられています。

 また、ダムに支流からいろんなものが流れ込んで、ダムの水(血)が汚れた状態を血瘀(けつお)と呼び、この血瘀が生理痛・閉経・子宮内膜症・卵巣嚢腫などの原因となると中国漢方では考えています。